今日こそは、今日こそは。 雪山に挑む度に繰り返す決意表明。既に数え切れない敗北を喫しているが、それでも挑まずにはいられない。大人しく引き下がってやることは、どうしたって出来なかった。 「レッド!」 「嫌だよ」 洞窟の入り口に立って中にいるはずの人間の名を呼ぶと、二の句を継ぐ前もなく切って捨てられる。 奥の方から顔を出したレッドは、グリーンの顔を見るなり手を伸ばして、グリーンが持っていた荷物を奪っていく。荷物を持ってあげようとかそういう優しさからではなく、恐らくは飢えによる動機から。 「まだ何も言ってねーじゃん」 「どうせ下りてこいって言うんでしょ。聞き飽きた」 むすっと眉を寄せて、グリーンに責めるような視線を向けてくる。責められる謂れなどないはずなのに、それが当然の権利であるかのような顔だった。 「下りる必要がないんだよ。どうしてわざわざ下りなきゃいけないの」 「心配するって言ってんだよ!お前、んなこと言っておばさんに何の連絡もしてねーじゃねぇか」 「その分、グリーンが言ってくれてるでしょう?」 息子の安否を気にする母親を見て、何も言わずにいるなんてことが出来るはずがない。幼馴染の母親は、グリーンにとっても身近な存在だ。 「・・・・・・」 「母さんが心配しないように。だから、母さんの手料理を持ってる」 確かにレッドの言う通りなのだけれど、何だか釈然としない。 そういう問題じゃないだろう、とも思うけれど、そんな理屈で覆るような意志だったら苦労なんてなかった。 「というわけで、俺は帰らないから」 くるん、と踵を返して元いた場所まで引き返そうとするレッドの腕を思わず掴んで、 「おい、ちょっと待てって・・・あー・・・」 後悔した。 この寒い雪山の上で、剥き出しの腕に温もりなど残るはずもなく。引き止めるために触れた右腕は、本当に冷たくて。 まるで、氷に触れているかのようで。 (くそっ・・・) ぞっと、する。 お前は本当に生きているのかと、口に出しそうになる。実際そんなことを言ったら、馬鹿を見るような目で見られるに決まっているけれど。 だって、そんなの心配かけさせる方が悪いじゃないか。 こんな、氷みたいな腕を、している方が。 「ちょっと、何」 「黙ってろ」 突然黙り込んだグリーンを訝しげな表情で振り返っているレッドの右腕を勢いに任せて思い切り引いて、腕の中に抱え込む。胡乱気に細められた瞳が解放を要求してきたけれど、聞けるか馬鹿野郎、と心中で罵りながら黙殺した。 グリーンの熱が、この冷たい身体に移ればいいのに、と思う。 冷たいのと混ざって、同じになって、固く凍っているかのような意志が、溶けてしまえばいい。そうしたらきっと、もう少し帰ってくるようになるんじゃないだろうか。 そんなことを考えながら、どうせ無理なんだろうなぁと諦めてしまっている自分もいる。 レッドは自由で、だからグリーンの腕だけじゃあ繋ぎとめ切れない。 「・・・少しの間でいいから、こうしてろ」 あぁちくしょう、悔しいなぁ。 真剣なんだよ、バカ 何で俺は、お前のことがこんなに好きなんだろうなぁ。
リクエストより、「レッドのことになると何事にも本気になるグリーン」 |
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