「ここが、シロガネ山・・・」 ぽつん、と呟きながら見上げた山は、カントーの何処よりも危険であると称される場所。 ふらりと足を運ぶような場所では、決してないのだろう。けれど、レッドは何の理由も持たずにここにいる。目的も、意志だってない。ただ、何処に行けばいいのか分からなくて、そんな時にシロガネ山には強いポケモン達がいるのだという話を聞いたから、立ち寄ってみようかと思っただけの話だった。 『なんで、お前に追いつけないんだろうな』 セキエイで戦ったグリーンが悔しそうに零した言葉が、耳の奥でずっと木霊しているような気がする。 そんな風に思われていたなんて、露ほどにも思っていなかった。 ずっと、前を歩いていたのはグリーンだ。 必死に追いついてもすぐに置いて行かれてしまっていたのは、グリーンの背中ばかりを見ながら歩いてきたのは、レッドの方だったのに。 (そう思ってたのは、俺の方だったのに) 追いつけないのが悔しくて、置いて行かれるのが腹立たしくて、だから必死に走って追いついた。それなのに、グリーンはレッドに追いつけないと言う。後ろにいるレッドのことなんて気にも留めていないんだろうと思っていたグリーンが、ひどく悔しそうに。 それを嬉しいと思えないのは、今この瞬間、何処に進めばいいのか分からずに途方に暮れているからだ。 今までは、いつだってグリーンが前を歩いていたから、レッドはひたすらその背中を追いかければ良かった。けれど、その道しるべを失った途端に途方に暮れてしまう。それなのに、グリーンがレッドに追いつけないわけがない。 「いっそ、本当に追いつけないところまで行っちゃえばいいのかな」 「ピーカ?」 「大丈夫、分かってるよ。それじゃあ・・・寂しいよね」 目標があって、ライバルがいて、だからこそ強くなりたいと思えたし、必死にもなれた。 誰もいない場所なんて、きっとつまらない。 (・・・今度は、ちゃんと追いかけてきて) 突然姿を消したら、グリーンはどう思うだろう。探してくれるだろうか。追いかけて、くれるだろうか? お節介で素直じゃない幼馴染のことだから、知るかとか何とか文句を言いながらもきっと探してくれるだろうなぁと想像すると、それは何だかとても楽しい気がして。 こっそり笑みを浮かべながら、目の前にそびえる山を再び見上げる。 高い高い、山。 グリーンがまた行ったことのない場所に足を踏み入れるのは初めての経験だけれど、心強い相棒たちがいるからきっと大丈夫。 「行こうか、ピカチュウ」 笑って問いかけると、足元でレッドを見上げる相棒は「ピカ!」と元気に頷いた。 グリーンはきっと、もっともっと強くなる。 だから、レッドも立ち止まっているわけにはいかないのだ。追いかけてもらうのなら、追いかけられるだけの強さがなくてはいけない。 それならば、この場所で最強を目指そう。 グリーンの背中ばかり見ている自分ではなくて、グリーンが必死になって追いかけてくれるような自分になろう。今度こそ、ちゃんと追いかけてもらおう。 (俺は、頂上で待ってるから)
リクエストより、『レッドさんがシロガネ山に登る前の話』 |
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