赤い提灯が夜闇にゆらゆら揺れている。 屋台からは活気のある声が辺りに響き、その声に誘われるようにして屋台を覗く人々。子供たちのはしゃぐような声と、行き過ぎないよう諌める親の声すら、バックミュージックになった。 賑やかで騒がしい、夏祭りの風景。 その場にいるだけで楽しくなれそうな、心浮き立つ空気。・・・に、包まれているはずなのに。 あぁ、それなのに。 「っていうかさぁ、夏祭りの見回りを生徒にやらせるってどうなんだよ?普通先生がやるだろ!いくら人員不足でもっ!!」 「はいはい」 今更誰に訴えたところでどうにもならないのだけれど、それでも言わずにはいられない。 その訴えを隣で聞いている甚平姿の幼馴染は涼しげな顔でりんご飴を一口かじり、仕方ないじゃないと言わんばかりに溜め息を吐く。 「これも生徒会長の勤めなんだから、諦めなよ」 「そりゃ分かってんだけどさ。折角の祭が台無しだっての」 「そう?」 首を傾げるレッドの右手には、食べかけのりんご飴。左手には綿あめの袋と水風船を抱え、更には頭に可愛らしいキャラクターのお面をつけている。 その姿は何処からどう見ても祭を満喫している少年という出で立ちだった。 グリーンが生徒会長として行う見回りに全く関係のない彼が隣を歩いているのは、善意から付き合うよと申し出てくれたからだ。一人でとぼとぼ見回るよりは楽しい分、その申し出は非常にありがたいし嬉しかったけれど、結局『一人で行くのは嫌だけど祭には行きたかっただけなんだろ?』と溜め息を零したくなるのはグリーンの了見が狭いからなのだろうか。 多分、そうなんだろう。 「・・・まぁ、お前が楽しそうで何よりだよ」 「・・・・・・・・・」 「レッド?」 「はい、これ持って」 ずい、と差し出される綿あめの袋。 咄嗟に右手で受け取ろうとすると「逆」と窘めらる。どんな理不尽だそれは、そうは思いながらも言われたとおり左手で受け取ると、レッドはさらに水風船を右手に持ち替えた。 突然どうしたのかと見守っていると、レッドの左手がそっと空いている右手を掴む。 「・・・・・・おすそわけ」 ぽそりと呟いたレッドは、淡い笑みを浮かべてりんごあめを一口かじった。 (はしゃぎ過ぎんなよ、なんて人のこと言えるか!)
ちなみに、レッドさんが頭につけてるお面はピカチュウでFA。 |
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