幼馴染は、あまり笑わない。 ・・・どころか、表情筋の動かし方を忘れているのではないかと思うほどに表情が動かないために、何を考えているのか分からないと恐れられることもしばしばだ。 他の目には無表情の中から感情を読み取ることは難しく、だからこそ余計にピカチュウ達ポケモンに向ける笑顔が珍しく見えてしまうらしい。(そしてそこから、人間には関心がないのだという誤解も生まれているようだった) 「ピーカ!」 レッドの肩に乗ったピカチュウがぺちぺちと頬を叩く。叩かれている当人は止めるではなく怒るでもなく、優しく笑って何?と首を傾げていて。 この表情を普段から浮かべていたら恐れられることもないのだろうが、現実になることはないに違いない。 (ま、難しい話か・・・) レッドは、ポケモンにしか興味がないのではない。 ただ、ポケモンに少し重きが置かれすぎているだけなのだ。 話しかけられればちゃんと答えるし、楽しいことがあれば笑いもする。腹立たしいことがあれば怒りもするし、悲しいことがあれば泣いたりもする。ふり幅は、とても狭いけれど。 そうと理解するよりも前にポケモン達に向ける表情を見てしまうから生まれてしまう、誤解と畏怖の心。 本人はまるで気にしていないようだから構わないのだろうけれど、幼馴染としては何だか複雑だ。そんなに怖がらなきゃならないような奴じゃないのに、と思っても生まれてしまった誤解はそう安々と解けるようなものではない。 「って!は、なに!?いきなり何だ!」 「呼んでるのに気付かないグリーンが悪い」 「・・・え、呼ばれてた?」 「ずっと」 突然痛みの走った額を押さえながら、いきなりデコピンを食らわせてきた張本人に抗議をすると、しれっと悪者扱い。 呼ばれていたことなど全く気付きもしなかったグリーンが悪いのは明白だけれど、何となく理不尽だと思った。 「・・・さっきからどうしたの?」 「あー・・・いや、何でもない。ちょっと疲れてるのかな」 「ふーん?」 ピカチュウの手を取ってにぎにぎと遊びながら寄越す、気のない返事。納得はしていないけれど、これ以上追求する気もないらしい。 そして、少し考える素振りを見せたレッドは、突然モンスターボールを一つ取り出した。 「少し寝たら?リザードンにお願いすれば多少温かいよ」 疲れてるんでしょう、とことりと傾けられた頭。 にこりと、少しだけ持ち上げられた口唇。 レッドは、ポケモンにしか興味がないのでは、ないのだ。 「・・・何、心配してくれんの?」 「食料配達係はちゃんと大事にしないとね」 「言ったなこの野郎!」 疲れてる、なんて嘘だけれど。 言葉に甘えて寝てしまおうかと横になりながら、自分勝手なことを思う。 (・・・やっぱ、俺だけでいいかも) 誤解なんて、生涯解けなくたって構わない。 俺だけは、ちゃんと知ってるよ
だって、そうしたらレッドは俺だけのもの。 |
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