いつも通りの電話だった。途中までは、確かにいつも通りだったはず。 それなのに、一体これはどうしたことだろう。 「ホントに帰ってきた・・・」 窓の外、暮れかかる空に見えた黒い影。徐々に大きくなるそれは、幼馴染を背に乗せたリザードンだ。 たまには帰って来い一ヶ月に一度ぐらい帰って来いと散々言っても聞こうとはしないあのレッドが。 お袋さんが心配してるだろたまには顔を見せろと何度言ったところで馬の耳に念仏を唱えるよりも無駄に思えるあのレッドが、何故か突然帰って来た。 (つーかやっぱり半袖かよ!) 相当なスピードで空を切っているのだろうその背中から振り落とされることないようがっしり首に巻き付けられた腕は、いつもの通り白い肌が剥き出しになっている。 せめて空を飛んでいる時ぐらい防寒してくれというグリーンの願いは今日も聞き入れられないままだった。 「で、今日は突然どうした?」 「別に」 「あぁそう」 今から帰るとのたまったその言葉の通りマサラタウンへ帰ってきたレッドは、自宅には寄らずに真っ直ぐグリーンの家へやってきた。 どうやら里帰りをしたいわけではないらしい。ということは、食料がなくなったからとか温かいものが食べたくなったからとか、そういうくだらない理由に違いない。もしくはグリーンとバトルをしたくなった、とか。 そうと分かっていてもあえて聞いてしまうのは、それが恒例の会話になっているからだろうか。 そして、どうせ答えが素直に返ってくるなどと期待しているわけでもないから、深追いもしない。 殆ど社交辞令のようなものだ。 「・・・今朝、シロガネ山に来た子とバトルをして勝ったんだけど」 「ん?」 答えなんて返ってこない。 それがいつものことで、だからとっとと夕飯の準備に取り掛かろうと立ち上がりかけたところへ、ぽそりと続く声。 珍しいことがあったものだと、ただそんなことを思って軽い気持ちで先を促しただけだった・・・の、に。 「なんでずっと一人で戦えるのかって聞かれた」 「また随分率直な質問だな・・・で?何て答えたの、お前」 「・・・帰りたい場所があるからって。そしたらその子、すごく驚いた顔してて」 俺何か変なこと言った?と首を傾げるレッドに、差し出せる回答などあるはずもない。 驚きと期待とが混ざり合って、自分でも呆れるほどに何も考えられなかった。なんだそれはと逆に問いかけたくて、けれど期待とは別の回答を恐れている自分もいて。 それでもやっぱり期待が勝ったのは、今までの年月を信じたかったからなのだろう。 「・・・その流れで、俺んとこ来たワケ?」 「ん?あぁ・・・そんなこと言ってたらなんかグリーンに会いたくなったから」 下りてきた、と事も無げに返される。 それはだからどういうことなんだと問い詰めたい気持ちもあるけれど、今口を開いたらみっとも無い声が出そうで必死に堪えたら、今度は何だか涙が出そうになった。 心臓に悪いから勘弁して! それは、『俺がいるからがんばれる』って。 そういう意味だと思って・・・いいんだよな?
がんばって俺の理性!!!←… |
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