明確な約束を、したわけではない。 いつからと聞かれれば最初からと答えるし、どうしてと聞かれればそれが当たり前だったからと答えるだろう。 グリーンとレッドにとって、それはとても自然なことだった。 (うわ、思ったより時間掛かったな・・・) 纏めていたプリントから視線を外して、ふと腕時計を確認すると予定していた時間を既に20分ほど越えている。 待ちくたびれてるかもなぁ、と図書室の机にぺったりと頬を預ける幼馴染の姿を想像すると、自然と苦笑が零れた。 「グリーン、レッドは今日も図書室?」 ガラッと扉が開くと同時に声をかけられて、驚きながら声の主を見やれば、そこには生徒会顧問のナツメが立っていた。 「そーじゃないすかね」 「そう。じゃあもうお帰りなさいな。そのプリントは私が預かっておくわ」 「どうも。お先に失礼しまーす」 本当にいつも、良いタイミングで現れる人だ。そんなことを思いながら脇をすり抜けると、貴方は想いがとても強いのねとぽそりと彼女が呟く。 前言撤回。とても、心臓に悪い人だ。 (ホントにエスパーだよな、あのセンセ) 足早に生徒会室から離れて図書室へ向かう道すがら、グリーンを振り返ってにこりと浮かべた微笑を思い出して背筋が冷えた。 何処までばれているのか、考えると空恐ろしい。 とは言え、良いタイミングで現れてくれることについては感謝しなければならないのだから、複雑な気分にもなろうというものだ。 「アイツ、待ってるだろうしなぁ」 早歩きがいつの間にか小走りになり、どんどん図書室へ向かう足取りは速まる。 レッドは、グリーンが生徒会があるから遅くなると言っても、決して先に帰ろうとはしない。 グリーンを待つ時間を考えれば自分の足で帰った方が遥かに早いだろうに、レッドの中にははなから歩いて帰るという選択肢はないようだった。 それを嬉しいと思ってしまう自分は、何処かおかしいのだろうか。 「レッド、帰るぞー」 そうして今日も、忠犬ハチ公よろしくグリーンの帰りを待つレッドを迎えに、図書室へと足を運ぶ。 窓に一番近い机の端の席でぼんやり外を眺めていたらしい幼馴染がゆっくりとこちらを向くのを待って、帰るぞともう一度繰り返した。 「お疲れ様、生徒会長」 「おう」 鞄を肩に下げてグリーンの方へ歩み寄りながら、労をねぎらう幼馴染ににこりと笑みを浮かべて返す。 他の目には殆ど表情が動いていないように見えるのだろうけれど、長い付き合いだ。分からないはずもない。 (弱いんだよなぁ・・・) ゆるりと細まった瞳は、確かに笑っていた。 その表情を見るだけで生徒会の業務が朝飯前のように思えるのだから現金だ。分かっているけれど、それこそもう惚れた弱味なので今更どうしようもない。 「機嫌良さそうだね」 「そうか?」 そうだよ、と答える声が風に攫われていく。 そうかもな、と応じた声も、一緒に。 「ねぇグリーン」 「んー?」 「明日も晴れるかなぁ」 「どうだろうなぁ」 自転車の後ろ、グリーンの背中に背を預けるようにして座るレッドは、夕焼けが綺麗だなぁと呟いた。
レッド様が笑うと、グリーンさんの頭がぱーんてなると思いました。(あとがき書くのもう止めた方がいいんじゃないかな) |
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