「なに、コレ」 「チョコ」 いつものように食料やら薬やらを届けに来てくれた幼馴染の荷物を早速ガサガサと漁っていると、見慣れた荷物の中に見慣れない茶色い箱。 ピンク色のリボンがかかったその箱は、どう見てもおにぎりとか薬の類には見えず、グリーンが入れ間違ったものかもしれないと首を捻れば、あっさりと回答が寄越された。 どうやら、入れ間違えたわけではないらしい。 今度来るときはチョコを持ってきて欲しいなんて言った記憶はないから、お裾分けみたいなものだろうか。チョコのお裾分けって何だろう。お菓子屋さんの知り合いでも出来たのだろうか。 「・・・くれるの?」 「今日はバレンタインだからな」 「バレンタイン・・・?あぁ」 「世間じゃ大騒ぎだよ。女の子の目が怖すぎて、さすがに逃げたくなる」 「へぇ」 うんざりだ、と言わんばかりの表情を浮かべたグリーンは、けれどレッドにチョコを持ってきたのだと言う。 何故バレンタインにグリーンがレッドにチョコをくれるのかはよく分からないけれど、グリーンは昔から女の子に人気があるからたくさんもらったもののお裾分けなのかもしれない。 もしくは、お姉さんからのチョコだろうか。 箱にかけられた可愛らしいピンクのリボンをくいと引っ張れば、しゅるりと結び目が解けてただの一本のリボンに戻ってしまった。自分では元の形には戻せないだろうから、勿体無いことをしてしまったような気持ちになる。 (おいしい・・・) 小さめに作られたらしいチョコは、口の中であっという間に溶けていく。そういえばチョコレートなんて随分食べてないなぁと思うと、何だかちょっと家に帰りたくなった。 「ありがとう、グリーン」 「おう」 「ありがとう」 「なに、そんなにチョコ嬉しい?」 ありがとうありがとうと連呼するレッドがおかしかったのか、呆れてるみたいな微笑ましいみたいな色々な感情の混ざった笑みを浮かべて、グリーンは首を傾いだ。 けれど答えは期待していないのだろう。今度はピカチュウにおいでと手招いてお菓子をあげている。 その様子を眺めながら他の言葉を探してみたけれど、やっぱり『ありがとう』以外には見つからない。 (・・・だって、ごめんはおかしいでしょう?) 何もあげられるものがなくてごめんと言ってしまいそうになるのをぐっと堪えたら、もう他には思いつかないから。 だからやっぱり、 「・・・ありがとう、グリーン」 あげられるものが、他にないんです たくさん言葉にしたら、何かが伝わってくれるんじゃないかって。 祈るように紡いだ『ありがとう』は、君に何かを届けてくれるだろうか。
あげられるものがないから自分をあげるなんてそんな展開には死んでもならない。それが我が家のグリレでした。ごめんなさい。 |
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