「・・・お前、何してんの?」 落ち着け俺、落ち着け俺。頭の中で何度も繰り返して必死に押し殺した声は、低く掠れて空気を震わせる。この際低くても掠れていても、叫ばなかっただけ偉いだろう。 真っ白な雪の上に大の字で転がっている幼馴染に、他に何と声をかければいいのかがまず分からない。いっそのこと馬鹿かお前はと思い切り詰ってやりたかった。それが本当に出来れば苦労はないけれど。 「・・・・・・人肌恋しくなる季節を、体感してる」 「んなもんこの場所にそんな格好でいる時点で体感出来てるだろうが!!」 随分と長い空白の後に寄越された回答があまりにどうしようもなくて、何か深い意味でもあるんだろうかなんて考え始めてしまった自分がいかに甘いか思い知らせたかのような気分になる。 「もしかしてお前、氷より冷たいんじゃねぇの?」 一体いつからこんなことをしていたのだろう。手袋をしているから分からないけれど間違いなく氷レベルの冷たさをしているだろう腕をぐいと引いて無理矢理起こすと、些か不本意そうな顔でレッドがグリーンの手に助けられて立ち上がる。 そこは、そんな顔をするべきところじゃない。 「こんな薄着で馬鹿な真似して・・・風邪ひくとか凍傷とかそういうのすっ飛ばして死んだっておかしくないぞ」 「大丈夫」 「根拠がないんだよお前のその自信は!」 風邪なんかひかないとか何とか言って実際に風邪をひいたのは何処の誰だ。 そんな事実があっても決して認めようとしない頑固な幼馴染は、やはり今日も頑として意見を変える気はないらしい。何て強情な奴だ。 「ひっ!?つめってーよ何すんだ!」 「・・・別に」 「お前なぁ・・・」 突然人の頬を両手で挟み込んでおいて、別にって何だ。口唇奪ってやろうかちくしょうと本気で喚きたくなるけれど、言いたいことも叫びたいことも全部溜め息に逃がした。 レッドの行動全てに振り回されていたら、身が持たない。 とりあえずグリーンの体温を根こそぎ奪おうとしている両手をべりっとはがして、左手にはめていた手袋をレッドの左手に無理矢理はめさせて、代わりに右手だけを攫う。 「とりあえず洞窟に戻るぞ。あーもうマジで寒い」 「ん」 「?・・・レッド、お前」 「何?」 「・・・いや、なんでもない」 ふと気付けば、いつの間にか仏頂面だった表情が柔らかくなっている。(と言っても殆ど無表情と変わらない)先ほどまでの不機嫌は何処へ行ったのかは知らないが、一刻も早く洞窟で暖を取るべきだ。 手袋を取って直に触れた手があまりに冷たすぎて、心臓に悪い。 「グリーン暖かい」 「そりゃどうも」 頬だけ、人肌
『人肌が恋しくなる季節を体感してる』のに、手袋で触れるとか有り得ない。 |
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