シロガネ山の寒さは、半端じゃない。 マフラーを巻いてセーターを着込んでコートを羽織って、それでようやく『普通の寒さ』に辿り着く。一枚とて脱げるような状況ではない。 ・・・というのに。 「お前さぁ・・・寒くねぇの?」 「寒くない」 ピカチュウをぎゅっと抱いたままふるふると首を振る。強情だ。 半袖のシャツを纏うのみの幼馴染。震えないよう堪えているのだろうが、時折耐え切れずに身震いしているくせにどの口がそんなことを言うのだろう。 「っくし・・・・・・・・・寒くないよ」 「お前まだ言うのか・・・あーもう、ほら来い」 「え?っ・・・!」 くしゃみをしてバツが悪そうにふいとそっぽを向こうとする身体ごと引き寄せて足の間に座らせて、ピカチュウを抱える腕もろとも抱き締める。氷に触れているかのような気分になるほど冷えきった身体は、むしろ何で生きているのか不思議なぐらいだった。 「寒くないって言ってるのに・・・」 「はいはい」 不機嫌そうに文句を言いながらも、暖かいのは心地が良いのだろう。もそもそと動いて何とか腕にすっぽり収まる場所を見つけて小さくなっている。本当に、全く素直じゃない。 (あーあ・・・) カントーのジムを制覇して四天王を倒し、当時チャンピオンの椅子に座っていたグリーンも破って、頂点に立った。そんな男も、ただの幼い少年なのだとこういう時にふと思う。大人びて見えたってまだ子供だったんだ、と。(自分もまた人のことを言えた義理ではないけれど) 雪山で半袖のまま過ごすなんてどう考えても馬鹿げているのに、決して譲ろうとはしない。 寒くないなんて、誰が聞いてもバレバレな嘘までついて。 レッドなりの意地なのか、それとも本気でそれが格好良いと思っているのか。どちらにせよ、ガキらしくて微笑ましい。 (・・・かわいいなぁ、もう)
オチがなくてどうしようかと思った。 |
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