負けて悔しいと思うことを、忘れてしまっていた。 勝てば勝つほど、強くなればなるほど、どんどん遠くなっていく。何故強くなろうと思ったのか、そんな大切なことさえ忘れそうになる。 だから、頂上を目指してみた。 そうして辿り着いた先は、見渡す限りの雪景色。少し下には木なんかもあったけれど、そこには本当に何もなくて。 真っ白なその景色があまりに今の心境みたいに見えて、少しだけほっとした。 「レッド!!」 大きく名前を呼ばれてびっくりしながら振り返ると、懐かしい姿がそこにある。一瞬夢か幻覚かと思ったけれど、ずかずかと雪道を必死に歩いてレッドの頭を殴った幼馴染が夢幻であるはずもなかった。 「おばさんに何の連絡もしないで今まで何してたんだこのバカレッド!!」 「何って・・・」 「ふらっと突然姿消しやがって人がどんだけ心配したと思ってる!?誰に聞いても知らないって言うしお前は誰にも言わないで行くし!一年以上もどっか行くならせめて何か残しって!?何すんだこら!」 「や、俺にも喋らせて欲しいなと思って」 べち、と額を打てば、何とか口を挟む隙を生むことに成功する。鈍い音を立てた額を抑えるグリーンは、一瞬眉間に皺を寄せたものの大きく溜め息をついて何とか溜飲を下げてくれたらしい。 反論はないのだが(グリーンの言うことはまぁ概ね尤もな話だったし)、あんまり捲し立てられるのは困る。というか、煩い。 「よくここが分かったね」 「まぁな。シロガネ山に登ってみたら強いトレーナーがいてボロ負けしたって奴の噂を聞いたんだよ。まさかと思って来てみりゃ何してんだこんなとこで・・・」 心底呆れました、と言わんばかりの表情で首を傾ぐグリーンは昔よりも少し大人になったのだろう。レッドが山に登ってから一体どれぐらいの月日が経ったのかは知らないけれど、あのグリーンでさえ変わるだけの月日が流れてしまっているのだ。 それを知るには、どうしたらいいだろう。 レッドの知らない月日を、知るには。 「・・・ねぇ、グリーン」 「何」 「ポケモンバトルしようか」 「はぁ?」 「負けるの、怖い?」 「っ・・・言ったな?久々のバトルで腕が鈍ったなんて言い訳、聞かないぜ?」 にたりと笑うグリーン。 それにつられて自分の口角が持ち上がったことに一瞬遅れて気付く。 胸を支配しているのは、高揚感。 久し振りの感覚に震える心の振動が、指先にまで伝わってくる。 あぁそうだ、この感覚が好きだった。 思い出すのは、真っ青な空の下、初めてもらったポケモンと旅に出たあの日。幼馴染と初めてポケモンバトルをして、負けた日。 そうだ。この感覚をずっと感じたままでいたかったんだ。 「お礼に、手加減なしで相手をしてあげるよ」 「何のお礼だかは知らないけど、カントー最強なめんなよ?」 さぁ、楽しい会話を始めようか!! 探し物は、何ですか?
ヤナギさんは、言いました。わしらはポケモンバトルで語ればよい、と。(… |
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