幼馴染は、何処までも自由な人間だ。
修行に出るとか何とか言って突然電波の届かないような山で暮らし始めるし(最近は何とかポケギアが使えるようになったからいいけれど、昔は本当に連絡が取れなかった)、かと思えば唐突に下山してきて腹が減っただの食料がなくなっただの言って人の家に転がり込んでくる。
幼い頃から付き合いのある奴だから多少は慣れているし、今更驚くことも多くはない。
いくら心配だからと言っても、ジムリーダーを担っている以上毎日毎日様子を見に行くわけにもいかないから、下りてきてくれるのは大歓迎でもある。その言葉には『その後にふらっとまた修行に出て行くなんてことがなければ』と付け加えたいが、とりあえずそれはこの際置いておくとしよう。

(下りてくるのはいいんだけど、さぁ・・・)

テーブルの向こう側でもごもごとパートナーポケモンと二人並んでパンを頬張るレッドを眺めながら、言うべきか言わざるべきか頭を悩ませる。今更グリーンが苦言を呈するようなことではないのだ。多分。
でも。・・・だけど。

「・・・なぁレッド。お前、何でウチに来んの?」
「?」

パンを咀嚼していた口がぴたりと止まって、ことりと首が傾く。(言われている意味が分からないのだろうが、口の中に詰まりすぎたパンが邪魔で声を出せないらしい)

「おばさん、いつも心配してんじゃん。先にウチ寄ってる場合じゃないだろ、ホントは」

レッドはいつも、シロガネ山から直行でグリーンの家へやって来る。
そりゃあグリーンも心配はするし真っ先に顔を見られるのが嬉しくないとは言わないけれど、レッドの母親の心境を思うとやはり複雑だ。

「なぁ、何で?」
「・・・・・・」

ぱちぱちと瞬いて、きょとんと呆けた何でだろうとでも言いたげな顔。
今まで考えたことがなかったのだろう。深い意味がないだろうことぐらいは分かっていたから、落胆するほどの望みもありはしなかった。(それはそれで悲しいような気もするが、気にしないことにしよう)
そんな達観したグリーンをよそに、レッドはもぐもぐと着実にパンを攻略していく。そうして最後にごくんと飲み込んでご馳走様と呟くと、いつもと少しも変わらない表情でようやく見つけたらしい回答をさらりと吐いた。

「グリーンなら、何でも許してくれる気がするから」





どうせ、
余所見なんて出来るはずもない






聞き様によってはとんでもない殺し文句。なのに、怒られる前に甘やかしてくれるとこに行きたいだけというどうしようもない理由。

2010/1/23



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