もう何度目になるのか、数えることなど一年以上も前に止めてしまったシロガネ山への登山。いい加減甲斐甲斐しすぎる自分にも呆れてしまうのだが、それこそ何度も自問自答して結局はこうなってしまうのだからどうしようもない話だった。 (俺ってやさしー・・・) 頂上へ登り詰めて、幼馴染が勝手に自分の家と決めて使用している洞穴を覗けば、眠るリザードンに寄りかかったままピカチュウを抱いて座っているレッドを見つける。 それはあまりにいつも通りの光景だった。 レッド、と声をかければくるりと首がこちらを向いて、どうしたのと傾く。やっぱり何にも気付いていないんだろう。最近ジムの方が何故か忙しくて来てやれなかったのは、思っていたよりも痛手だった。 「どうしたの、じゃねーよ。お前今日が何日だか分かってんの?」 ずんずんと進んで隣に腰を下ろせば、リザードンがぬくぬくと冷えた身体を温めてくれる。本当に、よくこんな場所に長い期間い続けることが出来るものだ。 当の本人は質問の回答が真剣に分からないらしく眉間に皺を寄せながら首を傾いでいる。 日付感覚なんて全くないだろうことは想像していたにはしていたけれど、思わず漏れた溜め息ぐらい今日は許して欲しい。 「全く・・・新年ぐらい自分の家で迎えろっての」 「え、もうそんな時期?」 「そんな時期っていうか、そんな日だよ。もう31日」 嘘、とさすがに驚いたらしい幼馴染はいつもよりも瞳が大きく開かれる。 前にやった時計はと問えば、そういえば一週間ぐらい前?に壊れたんだよねとさらり。止まってしまったのだという時計を見やれば一ヶ月前の日付で止まっていて、一気に肩が落ちた。 これを一週間前と呼ぶのか、この男は。 『何となく』という時計の信用のなさは、他の追随を許さない。要は、とんでもなくアテにならない。 どうすれば一ヶ月が一週間程度で済まされるのか。 普段なら別にそれでも構わないのだろうけれど、せめて新年ぐらいは故郷へ帰るべきだ。と、思う。(別に俺が会いたいからとかそういうことでは、決してない) 「おばさん、待ってるだろ」 「・・・」 今からでも帰ろう、という気持ちはないのだろう。黙りこくってピカチュウを抱き締める腕は、少しも緩む気配はない。 折角ここまでやって来たというのに、どうやら骨折り損らしい。心の中でおばさんごめんと謝りつつ、まぁもういいかと思っている自分がいるのも、確かで。 結局、ただ自分がこの自由な幼馴染と新年を迎えたかったのだ。ただ、それだけなのだ。 「・・・ここでも除夜の鐘とか聞こえてくるかな」 「さぁな。・・・・・・あ」 新年があけちゃった ちらりと目をやった腕時計の針は既に、天辺を通り過ぎていた。
きっとマダツボミの塔とかで除夜の鐘を鳴らすんじゃないかな。カントーまで届かなそうだよね!(… |
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