目を瞑っていても感じられた眩しさがなくなってから、ゆっくりと瞳を開けると視界いっぱいに広がる茶色い天井。つい先ほどまで見ていた真っ白な景色とはまるで違う、何処か懐かしさを感じる色。
何処だろう、と首を巡らせようとしたところで、ふいにドアの開く音がした。

「・・・グリーン?」
「っ!ようやく起きたか・・・!」
「ここは・・・?」

ぼんやりと首を傾げると、グリーンがこれでもかと言うほど呆れ顔を作って俺の部屋だよと教えてくれる。
あぁ通りで懐かしいと思うはずだと思っていると、はぁっと大袈裟に溜め息を零したグリーンがベッドの傍までやって来て手近にあった椅子に腰を下ろした。

「お前、シロガネ山に登った時に落ちて頭打ったんだよ。覚えてない?」
「・・・・・・」
「リザードンが運んでくれなかったら、死んでたぞ。ホント勘弁してくれ」
「・・・うん」

覚えてない?と問われても、今思い出されるものと言えば寂しく哀しい世界のこと。誰にも声の届かない、大切な人に触れることすら出来なかったあの世界のことだ。
けれど、そっと頭に手を伸ばしてみると身に覚えのない布のようなものが巻かれていて、グリーンの言葉が嘘ではないんだろうことは分かる。(更に言うなら、痛みも確かに存在していた)

「・・・昨日さ、夢を見たんだ」
「夢?」
「あぁ。あんまりよく覚えてないんだけどさ・・・」

突然神妙な顔をして話し始めたグリーンの顔には、疲れが色濃く滲んでいる。どれぐらい眠っていたのか分からないけれど、レッドの意識がない間付きっきりで面倒を見ていてくれたに違いない。
幼馴染は昔から世話焼きだった。あの少し幼いグリーンも、そうなんだろうか。
寡黙で、意思の強そうな目をした少年を、厭わずに構い続けて引っ張っていくのだろうか。

「で、最後に誰かが言うんだ。ちゃんと返したから、って。目が覚めてすぐはお前の声に似てるような気がしたんだけど、やっぱ似てないかも」
「・・・俺じゃ、ないよ」
「ん?」

あそこは何処だったんだろうとか本当にただの夢だったんだろうかとか、色々考えたいことはあるのだけれど、上手く頭が働いてくれない。
どちらにしても、『もう迷わないで』と言ったあの声にはもう会えないんだろう。
会えるのなら伝えたいことがあったけれど、何となくそんな気がした。
だから、こっそり胸の内で呼びかける。

(・・・ありがとう、『レッド』)


君の声は、確かに届いたよ。





み な し ご み ら い






蛇足気味なおちでした。

2010/7/23



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